2010年11月27日土曜日

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変奏曲形式の続き
ソナタ(sonata)形式の展開部なども音楽の形としては変奏曲(variation)に当るのですが、普通は1つの主題による変奏だけではなく、他のメロディーに基づく部分も含まれていますので変奏曲形式には当たりません。ここではひとつの楽章全体がひとつの主題の変奏曲になっているものだけを変奏曲形式と呼んでいます。ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」のように変奏曲だけでひとつの楽曲になっているものもたくさんあります。これらは変奏曲形式の楽曲と言えるでしょう。ドボルザークの交響曲第9番(新世界より)やシューベルトの交響曲第8番(ザ・グレート)などのように、すべての楽章であるひとつのメロディーの変奏が使われている楽曲もありますが、これらの楽章には他のメロディーも含まれていますので、ここでいう変奏曲形式ではありません。しかし、こうして全部の楽章に同じメロディーの異なる変奏曲が入っていると、そのことに気付かなくても曲全体を通じてなんとなく統一感が感じられるます。このように、クラシック音楽(classical music)では、いたるところで変奏曲が使われているのです。

変奏曲というものは、少し音楽を聴き慣れた人にとっては大いに面白みを感じるものですから、ひとつの主題を提示した後に、いろいろな工夫を凝らした変奏が続くものが、独立した曲として多く作曲されています。代表的なものとしてブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」がありますが、この他にも多くの名曲があります。googleで「変奏曲」を検索すると、大きい曲の1つの楽章になっているものも含めて、たくさんの曲名が出てきます。

2010年11月26日金曜日

classical music_listening music_variation_sonata_string quartet_audio system

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三部形式
起承転結の転の部分に当る楽章では、メヌエットまたはスケルツオと呼ばれる軽快な音楽が使われることが多いのですが、これらはほとんど三部形式と呼ばれるA-B-Aの形になっています。中間部と呼ばれるBは前後のAとは対照的な音楽になっていて、そのコントラストの付け方は作曲家の腕の見せ所になります。ここで意外な変化や絶妙の変化があると聴く人は喜びます。三部形式と言う単純な構造がそのコントラストを引き立てます。

変奏曲形式
変奏曲(variation)と言うのはある主題(メロディー)を提示した後、これを土台にして様々な方法で変化させて雰囲気を変えた曲をいくつか並べて提示する音楽です。作曲家が様々な工夫を凝らして、ひとつのメロディーに基づいてどれほど違う雰囲気を出せるかという腕前を見せびらかすものです。調性、リズム、テンポ、楽器編成の変化やポリフォニーなどを駆使して変奏すると一見全く別の音楽のように聴こえることもあるのですが、よく聴くと元のメロディーがちゃんと組み込まれているのです。聴く人は雰囲気の変化を楽しむだけでなく、その秘密を見破る楽しみもあるのです。変奏曲形式では少なくとも2、3種類大規模なものでは5種類以上の変奏が行なわれます。前に例として挙げた曲の中ではシューベルトの弦楽四重奏曲(死と乙女)の第2楽章、同じくピアノ五重奏曲(鱒)の第4楽章などがあります。

2010年11月25日木曜日

classical music_listening music_basic structure_sonata_audio equipment

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ひとつの楽章を構成するするための基本の構造として使われる三種類の形式のそれぞれについて大雑把に説明しましょう。
ソナタ形式(sonata form
基本形は、序奏(無いものも多い)→提示部→展開部→再現部→結尾部の順序で進行するものです(主題とは、主要なメロディーのことです)。
・序奏がある場合には、ゆっくりと重々しく始まるものが多く、主題とは全く異なって主題とのコントラストを狙ったものと、主題を部分的に導くものとがあります。
・提示部では第1主題→第2主題の基本形が提示されます。ここでは主題を印象付けるための工夫がされます。
・展開部では第1主題と第2主題の両方またはどちらか一方をいろいろな方法で装飾したり変形したり、リズムを変えたり楽器を代えたりした変形形態がいくつか続けて演奏されます。この展開の仕方でこの楽章の面白さの大部分が決まります。
・再現部では、第1主題と第2主題の両方またはどちらか一方が、原形に近い形で楽器を代えたりして元の形を思い出させるように演奏されます。
・結尾部ではそれまでの要素のどれかを選んでいろいろ加工して盛り上がったたり逆に静かになったりして楽章の最後を締めくくります。どの作曲者も印象的な終わり方にするために知恵を絞っています。

これがソナタ形式と呼ばれる構成の基本構造ですが、これの変形になっているものも多いです。例えば、第3主題がある、主題と主題の間、主題の提示と展開部の間、展開部と再現部の間などに経過句と呼ばれるつなぎの部分があるなど、楽しめる音楽にするためにいろいろな工夫がされます。その工夫を見抜くのもクラシック音楽を聴く楽しみのひとつです。

2010年11月24日水曜日

classical music_listening music_movements_string quartet_sonata form_variation

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ここでクラシック音楽(classical music)の楽曲の構成(composition)とその構成要素の構造(structure)について簡単に説明しましょう。
クラシック音楽の代表的な構成は、
・交響曲(symphony)、弦楽四重奏曲(string quartet)、ピアノ五重奏曲などは4つの楽章を持つ、
・協奏曲(concerto)、ピアノ三重奏曲(piano trio)、ソナタ(sonata)などは3つの楽章(movements)を持つ
と言うのが標準的な形ですが、それぞれ例外もかなりあります。例えばベートーベン(beethoven)の後期の弦楽四重奏曲には5楽章(15番)、6楽章(13番)、7楽章(14番)のものがそれぞれ1曲ずつあります。ただし、2つの楽章が続けて演奏されるものが有ったりして、人によって数え方が違うこともあります。

4楽章で構成される楽曲では、4つの楽章は漢詩の「起、承、転、結」とほぼ対応するような順序で並んでいるものと、むしろ「起、転、承、結」と言った方がよい順序で並んでいるものがあります。前者の場合のテンポは急-緩-急-急となっているものが多く、後者の場合は急-急-緩-急となっているものが多いのですが、急とか緩といっても、それぞれにいろいろな速さがあって、その違いによって楽章間のコントラストの付き方が変わります。

それぞれの楽章の構造には主に次の3種類があります。
・ソナタ形式
・三部形式
・変奏曲形式
次に、これらの構造のそれぞれについて簡単に説明しましょう。

2010年11月21日日曜日

classical music_listening music_string quartet_chamber music_composer_Bartok_

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弦楽四重奏曲(string quartet)を中心にして室内楽(chamber music)について書いてきました。弦楽四重奏曲は他の室内楽と同様に、元々は、作曲家が自分の身内や友人と一緒に演奏して楽しむために、または作曲家(composer)の後援者が自分達で演奏するために依頼して作曲されたようですが、そのうちに楽譜を販売するために出版社の依頼で作曲されるようになり、さらにベートーベンのように作曲者が自分の人生の集大成を目的として、いわば自分自身のために作曲するようにもなりました。ベートーベン(1826年没)以後バルトーク(第1番、1908年)までの80年余りの間に約40人の作曲家が弦楽四重奏曲を作曲していますが、ベートーベンを意識した腕試しとして、ほんの1、2曲ほどしか作曲しなかった人が多いようです。例外はメンデルスゾーンの6曲とドボルザークの14曲だけでした。

しかし、バルトーク(Bartok)以後は、弦楽四重奏曲が持つ表現力の可能性が再認識されて、弦楽四重奏曲を数多く作曲する作曲家が続々と現れています。しかし、残念ながら、今のところバルトークを越える評価を受けるものは現れていません。先にも述べましたように、弦楽四重奏曲には、柔軟性、音質のさわやかさ、バランスの良さなど、室内楽として多くの長所がありますので、もっと多くの名曲が現れることを期待したいものです。

2010年11月18日木曜日

classical music_string quartet_chamber music_composer_audio system

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スメタナとヤナーチェクも数は少ないですが、魅力的な弦楽四重奏曲を残しています。現代になってショスタコーヴィッチを初めとして10曲以上作曲した人が何人か現れています。私はショスタコーヴィッチの曲を放送で3曲だけ1回ずつ聴いたことがあるだけですが、やはり天才だなと思わせるところがありました。

そしてバルトーク(Bartok)です。バルトークには6曲の弦楽四重奏曲がありますが、これらは別格です。ベートーベンかバルトークかと言う程のものです。私は大学受験勉強中に深夜放送で弦楽四重奏曲第3番を聴いて初めてバルトークの名前を知ったのですが、これはちゃんと聴かなくてはと思いました。大学に入って家庭教師のバイト料を貯めるとすぐにレコード屋に行って、発売されたばかりのジュリアード弦楽四重奏団のレコードを全曲買いました。その時にはまだベートーベンの弦楽四重奏曲も全曲は聴いていませんでした。そしてまもなく、当時日本で発売されていた弦楽四重奏曲以外のバルトークのレコードも全部揃えました。といっても当時は全部で10枚足らずしか発売されていませんでしたが。

バルトークの弦楽四重奏曲では4番、5番、6番が特に人気があるようですが、他の4曲もすばらしいです。確かに4番が最も多彩ですが、透明感のある美しさと力強いリズム感を特徴とする1番、2番やコンパクトで内容の詰まった3番も、他に並ぶもののないすばらしい曲です。これらの曲の少なくとも一部は、人類の文化遺産としてベートーベンの弦楽四重奏曲と共に永久に残るのではないでしょうか。

シェーンベルク、ウエーベルン、ベルクも優れた弦楽四重奏曲を作曲していると言われていますが、いずれも数は少なく、また私は音源を持っていませんし、放送でも滅多に聴けませんのでよく把握していません。

2010年11月16日火曜日

classical music_chamber music_Beethoven_listening music

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ベートーベン(Beethoven)の後期の12番から16番までの5曲は、中期の弦楽四重奏曲群からさらに14年余り後の作曲ですが、いずれも思い通りの構想と表現で作曲されたベートーベンの最後の傑作群です。上で述べたベートーベンの特徴をすべて備えた上で、さらに高い境地で作曲されたものと考えられています。取っ付き難いという印象を持っている人も居られるようですが、どの曲にも始めて聴いたときから感動するような部分が必ずありますので、そこを手がかりにして何回か聴けば徐々に全体が味わえるはずです。一言で言えば極めて美しい音楽です。おそらく一生聴いても飽きないと思います。

ベートーベンにはこの他にピアノ三重奏曲、バイオリンソナタ、チェロソナタなどの名曲もあります。

ベートーベンの弦楽四重奏曲(string quartet)が、後世の作曲家達の挑戦を退けるような名作揃いなので、多くの作曲家は、2、3曲作ってみただけで諦めてしまったようですが、シューベルト(Schubert)とドボルザーク(Dvorák)だけはかなりの数の弦楽四重奏曲を作曲しています。

シューベルトの弦楽四重奏曲第13番(ロザムンデ)と14番(死と乙女)は十分聴くに値する名曲です。また、この他にシューベルトにはピアノ5重奏曲(鱒)およびピアノ3重奏曲第2番という名曲もあります。これらの曲では、歌曲の伴奏を聴いても分かる通り、シューベルト独特の実に簡潔でさわやかなピアノが生かされています。

ドボルザークには多くの室内楽があります、弦楽四重奏曲では一般に「アメリカ」と呼ばれている曲が比較的聴く機会が多いです。独特の雰囲気を持つすばらしい曲です。ピアノ五重奏曲「ドゥムキー」も割合よく聴かれています。この他にも名曲と言われる室内楽曲がいくつかありますが、あまり聴く機会はありません。

ドビュッシーとラベルには1曲ずつ弦楽四重奏曲がありますが、どちらも独特の雰囲気があってなかなか良い曲だと思います。