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前回お話した「音楽の泉」を聴いていたのは食事をしながらですから、それほど真剣に聴いていたわけではありませんでした。なかなかいい曲がたくさんあるのだなとは思いましたが、特に強く感動したという記憶はありません。
ところが、中学生になり、父がLPレコードが掛けられるラジオを買ってから、積極的に音楽を聴くようになったときには、実に多くの曲が自分の頭の中というか、心に残っていたことに気付きました。人間の意識と言うものは結構勝手に働いているものなんですね。やがて、それまであまり魅力を感じていなかった曲なのに、ある日突然面白さが分かるということが度々起こるようになりました。
中学、高校と進むにつれて聴く音楽の種類も増えて近代や現代の音楽も聴くようになり、一流の演奏家のレコードを聴いたり、兄に連れられて演奏会に行ったりするうちに、自分で音を出そうと言う考えはすっかりなくなりました。
一流の演奏家の音楽というものが、自分には100年がんばっても真似のできないレベルにあることは前からよく分かっていましたが、自分自身で楽しめるレベルにも到達できないと思うようになりました。「自分でヘタな音楽をやるよりも天才達の演奏を聴く方に廻った方がずっと楽しめる」と気付いたのです。
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