2010年10月18日月曜日

音楽を楽しむ

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私の兄弟5人は全員が音楽を聴きますが、私は兄弟の誰かと一緒に音楽を聴いたことは殆どありません。音楽について一緒に話すことは時々ありましたが、聴くときは、皆それぞれ自分の好きな時に自分の好きな曲を聴いていました。「こんな曲があるぞ」といって聴かせる時も、レコードやCDを渡したら、私はさっさと部屋を出ます。たとえ一緒に聴くとしても途中で「ここがいいんだよな」なんて言ったらぶち壊しです。感想は曲が終わってから聞きます。

つまり、クラシック音楽は基本的に「お一人様」用の娯楽なのです。コンサートは大勢の人と一緒に聴きますが、2000人居ても、奏者または指揮者が入場して拍手が終われば、後は誰も一言もしゃべりませんから、全員が完全にお一人様状態になります。それで窮屈だと感じたことは60年近くの間に一度もありません。それは意識が音楽に集中しているからです。それでも演奏が終われば一斉に拍手をします。その拍手で聴衆がどの程度共感したかが分かります。

こうして、「お一人様状態」で音楽を聴いていると、徐々に音楽のいろいろな表現に面白さを感じるようになります。そうなれば、最初はところどころしか頭に入らなかった曲が、初めから終りまで楽しめるようになります。

言い方を変えれば、音楽を聴くということは、自分がその曲から何を感じ取れるかを観察することです。オーバーに言えば、音楽の助けを借りて自分の心と向かい合うことです。そのためには、それに値する曲を聴かなければなりませんが、幸いなことに、それに値する古今の名曲は、膨大な数あります。恐らく、一生かかってもとても全部は聴ききれないほどあるでしょう。多くの曲は、少なくとも10回以上は聴かないと全体が把握できないほど内容が豊富です。私はまだ、すべての聴くに値する曲の10分の1も聴いていないと思います。

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